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茨城県で毎年行われている音楽フェスティバルGoose Fresh Beat(以下GFB)の主催、伊香賀守は、音楽フェスティバルをひとつのツールとして考え、それを巧みに用いることで茨城県の音楽シーンを活性化させようという明確なコンセプトを持っている。

インタビューを読んでいただければわかることだが、彼はGFBがメインだとは考えておらず、

茨城県で音楽がスムーズに鳴り響くための、ある種の潤滑油として機能させようとしている。

だから彼は、本祭であるGFBだけではなく、前夜祭や忘年会といったGFBに付随するイベントや、Beat Burn、え~じゃないか、あの頃フェス等々、1年を通して様々なイベントを行っているのだ。

ひとつひとつのイベントにコンセプトがあり、それらはゆるやかにGFBに集約され、またそこから解き放たれてゆく。

音楽フェスティバルを用いた地域おこしといった話は、日本中に音楽フェスティバルが乱立している昨今、よく聞く話だ。しかし、GFBはそのわかりやすい定型に落ち着かない、

どこか奇妙な物語性を持っており、それが茨城県に不思議なエコシステムを築きはじめている。

GFBに出店している地域の飲食店、伊香賀さんと関わりのあるイラストレーターやカメラマン、

筑波大学の音楽サークルTsukuba Music Project(以下TMP)をはじめとした様々な人脈が交差してコミュニティが出来上がり、そこから派生してまた違った音楽イベントが作られる、

といった具合に。

「ハレ」としての祭りはいつまでも続かないし、ぼくたちは踊り続けることはできない。

祭りというドーピングを続けるとコミュニティは持続性を失う。経済がまわらないと音楽もまわらない。少子高齢化や地域の過疎化が進むと、イベントは力を失ってゆく。それらを踏まえたうえで、地域の音楽シーンを巡る現状に対してどのような処方箋があるのか、どこに希望を見出せばいいのか。あとがきのようなイントロダクションになってしまったが、そういったことを考えながら、このインタビューを読んでほしいと思う(八木)

インタビュー、テキスト:八木皓平(音楽批評家) 

記事作成協力:水野真由美(TMP元代表、K-popイベント『베프(ベプ)』主催)

とりあえずやってみようか、という感じでヌルっと始まったんですね

Y「GFBをはじめようと思ったきっかけを教えてください。」



I「ぼくがGFBをはじめた2009年って、各地で音楽フェスがスタートしはじめた頃だった記憶があります。だから、自分でも音楽フェスが出来るんじゃないかと思ってはじめましたね(笑)」



Y「当時、GFBをはじめるにあたって参考にした音楽フェスってなにか覚えてます?」



I「コダマ(http://kodama-09.seesaa.net/)は参考にしましたね、すごくDIYな音楽フェスで。とはいえ、当時はみんな探り探りでそれぞれの方法論を求めてやっているような感じでした。だから、何かしらのフェスがあってそこに肩を並べたいっていう考えはあまりなかった気がします。ただ、The Beachesのヒサシ the KIDさんに「フジロックみたいで良いね」って言われたのは印象に残っています。だから、GFBがどんな音楽フェスか聞かれたら『ゆるいフジロックです』って言うようにしています。」



Y「ということは、最初カッチリしたコンセプトがあったというよりは、とりあえずやってみようか、という感じでヌルっと始まったんですね。」



I「そうですね、もともと大きな目標は定めてなくて。ただ、最初のうちは、音楽フェスをやったら儲かるんじゃないかとか思ってたことはちらっとありますね。蓋開けてみたら全然でした(笑)」



Y「GFBは、基本的にはインディーズの音楽が中心のフェスですよね。」



I「音楽フェスっていったら有名なバンドを呼びたいなと思うじゃないですか。でも、ペーペーが呼べるわけないってことにすぐに気づいて(笑)最初のうちは、ブッキングもどういう感じでやればいいのかわからなかったので、酷かったですよ。ギャラ交渉のとき、例えば20万って言われたとしたら、それ無理なので5万にしてくださいとか平気で言ってたので(笑)今だったらそんなこと口が裂けても言えないですけど。」

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GFB‘19(つくばロックフェス)
2019年

7月13日(土)~14(日)
開場/開演 10:00 終演20:30
つくばねオートキャンプ場
[出演] 
[7/13]
中村一義(Acoustic set with 三井律郎)/曽我部恵一/カネコアヤ/OGRE YOU ASSHOLE/THE NOVEMBERS
/グッドラックヘイワ/ROTH BART BARON/世武裕子/ヒグチアイ/CHIIO/クリトリック・リス/inweu/kidono/KOIBUCHI MASAHIRO/灰色ロジック/Luminous101/キコエマスカ?
DJ:保坂壮彦/ヒサシtheKID(THE BEACHES)/宮田岳(黒猫チェルシー)/ タイラダイスケ((FREE THROW)/badhair
[7/14]
POLYSICS/髭/DENIMS/TENDOUJI/ズーカラデル/キイチビール&ザ・ホーリーティッツ/mol-74/the quiet room/Lucky Kilimanjaro/んoon/No Buses/Mom/ベランダ/w.o.d./SonoSheet/GRASAM  ANIMAL/BEAST WARS
DJ:星原喜一郎(New Action!)/片山翔太(BYE CHOOSE)/ユヤマモトキ(NIGHT VACATION)/HAGA/Takuto Okamoto
[2days]
DJ:yusk/minisky
[主催・企画]
Rocket Dash Records
[後援]
石岡市

official site:

http://goosefreshbeat.web.fc2.com/

official twitter:

https://twitter.com/gfbfes

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2009年GFBの様子

Y「2009年って、つくば周辺のCDショップ事情ってどんな感じでしたか。」



I「この年は『WAVE』が駅前のキュートの所にあったくらいですかね。3~4年前はつくばにもタワレコがあったんですよ。それもなくなってしまいましたね。」



Y「CDショップがあった方がGFB的にもいいですよね。水戸のタワーレコードはGFBのコーナーを作ってくれていますしね。」




I「発信する場所は、多い方が助かりますよね。だから1つでも潰れてしまうと痛手です。店が潰れるってことはその地域の音楽コミュニティが縮小するってことじゃないですか。先日閉店したTSUTAYAつくば桜店も、GFBを初期から応援してくれていましたから寂しいですよね。」




Y「GFBの開催場所について聞かせてください。一度変わっていますよね。」




I「ここ数年開催している石岡市つくばねオートキャンプ場とは別の場所で、豊里ゆかりの森っていう場所(http://www.tsukubaykr.jp/)があって、最初の5年間はそこでやっていましたね。その場所が使えなくなって今の開催地に移ったという感じなんですよ。もともと豊里ゆかりの森ありきでGFBは始まりました。」



Y「どうして使えなくなったんですか?」



I「豊里ゆかりの森は、つくば市の持ち物なんですけど、最初はそこでイベントをするにあたって音のボリュームについてのルールがとくになかったんですよね。だから、わりといろんな人たちが自由に使っていたんですけど、みんな好き放題やっていたら、近所から苦情が集まって来たらしくて(笑)ぼくらはクレーム対策として、地域まわりをしたんですけど、他のイベントの開催者たちはしていなかったようで、ぼくが住民の方に『うるさくしているのはお前たちか』と怒られてしまったこともありました。だから豊里ゆかりの森でGFBを開催しているときは、ぼくはステージをほとんど観ないで、外の田んぼとかにいて、音量をなるべく下げるよう指示していましたね。で、そんな感じで色々あって、結局場所の変更をすることになり、石岡市つくばねオートキャンプ場になりました。今は、会場付近の家々は全部まわっていますね。」



Y「まわって行ったらだいたい受け入れてもらえますか?」



I「そうですね。ただ、家にいない方もいらっしゃったので、ポストに封書を入れていたんですけど、それでもクレームが来るということもありました。それ以降は、一軒一軒にチケットを入れて、ぜひお越しくださいというウェルカムな状態にして。これをやったら一昨年くらいからクレームは無くなりました。」



Y「地方の音楽フェスにとっては、地域住民との関係はかなり重要ですよね。」



I「自治体が積極的に絡んで、地域のお祭りの一環として音楽フェスがあるという形になっているところも多いみたいですね。」



Y「そのあたりはGFBはどうなんでしょう。地域発信型の音楽フェスと言いつつ、地域のお祭りとして役所等と密接に連携しているわけではないという微妙な感じなんでしょうか。




I「個人的には地域と関わりは持ちたいので、場所が石岡市つくばねオートキャンプ場に変わってから石岡市役所に話をしに行きましたね。」




Y「では石岡市とは、今は協力的な関係なんでしょうか。」




I「後援名義っていうのがあるんですよ。こういうイベントをやりますと市役所に伝えたら、市が名前を貸すことで応援してくれるっていう。それは場所を移してからもらってはいるんですけど。ただ、後援名義をもらえたから市がなにかしてくれるというのではなく、市はこのイベントを許可していますよという証明みたいなもので(笑)」




Y「それは伊香賀さんの仰っている、地域のお祭りのような協力関係とは違いますよね?」




I「なかなか難しいですねそこは。ぼくはそこまでいけてないと思っています。




Y「音楽フェスを10回やっていても、まだ認められていないって感じなんですね。」



I「石岡市長が変わってからは、市役所に若い人たちも入って『音楽フェス、良いんじゃないですか』みたいに言ってくれるようにはなりましたね。正直、その前の体制はあまり協力的ではないというか(笑)」



​Y「少しずつ関係性は良くなってきているんですね。また、GFBは伊香賀さんがボランティアのスタッフたちと一緒に作り上げている音楽フェスで、学生から社会人までいろんな人たちが手伝ってくれていますよね。初期はどんな方々が手伝ってくれたんですか?」




I「初期は知り合いに、お願いしますと頼んでいました(笑)学生も若干いたんですけど。フェスの規模が大きくなるにつれてスタッフが増えてった感じですね。今手伝ってくれている学生は就職しても夏に戻って来てくれるんですよ。2012年や2013年にスタッフを始めた子が、今も手伝ってくれているので。」



Y「つくば市は学生が元気なイメージがあります。GFBのボランティアとしてももちろんですが、伊香賀さんが開催するイベントにとって、TMP(Tsukuba Music Project。筑波大学の音楽系サークル http://www.tsukuba-music-project.com/)に所属している学生たちの存在は大きいですよね。」




I「大きいですね。」




Y「そういった若い力のおかげで、GFBをはじめとした伊香賀さんが関わる様々なイベントがつくばで徐々に大きくなってきて、今や多様なイベントが企画できるようになってきているっていう状態なんでしょうか?」

 

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GFBスタッフ

たくさんのお客さんの前で観てもらえるんじゃないかなって思って

I「そうですね。GFBをはじめて今年で11年目ですけど、いろんな種類の音楽イベントができる環境がようやく出来つつあるなって。今までは何かイベントをやろうとしても人がいないっていうのがあったから。今は人もいるし場所もあって、後はやるだけっていう感じになっています。最近は茨城県のバンドも頑張ってきているので。6/29にfrogで『Beat Burn ch88』というライヴ・イベントをやったんですけど、そこに出演しているLuminous101っていうバンドは、元々TMP出身の子が結成したバンドなんですよ。FLAKE RECORDSの和田さんが推してくれることで、徐々に知名度も上がってきていて。地元のバンドが地元に貢献できる活動ができるような環境を作るのが最終目標だったので、その実現にほんの少しずつ近づいてきたかなって。」




たくさんのお客さんの前で観てもらえるんじゃないかなって思って




Y「そういう話を聞いていると、10年以上かけて状況が確実に変わってきているのを感じますね。また、GFBには前夜祭というサブイベントがありますが、これはGFB開催当初からやっていたんですね。これは入場料無料のイベントですが、最初からずっと無料だったんでしょうか?




I「無料ですね。」



Y「第一回の前夜祭でシャムキャッツが出演していて驚きました。」

​​


I「じつはシャムキャッツのドラムの子が筑波大卒なんですよ。彼らのことは、つくばロックフェスのTシャツの絵も書いてくれているイラストレーターのnatunatunaさんに紹介してもらって。それこそ10年以上前ですね、シャムキャッツが学生の頃だったので。あの人達はデビュー時からほんとうに独特でしたよ。正直、これは売れねーだろって思っていました(笑)」



Y「黒猫チェルシーの宮田さんも、ずっと伊香賀さんのイベントに出演していますよね。」



​I「宮田くんも筑波大卒なんですよ。」




Y「ああ、そうなんですね。メンツを見ているだけじゃ分からなかったんですけど、出演者に茨城県に関わりのある人たちがたくさんいて、そういう人たちが伊香賀さんのイベントを支えている部分があるんですね。」




I「それもありますし、ぼくは音楽フェス以外にもライヴ・イベントをライヴ・ハウスでやっているじゃないですか。だから、音楽フェスが最終目標というよりは、普通のライヴ・イベントを盛り上げるために音楽フェスがあると思っているんです。なので、GFBによく出てもらっている、チーナやオワリカラ、tricot、SuiseiNoboAzあたりのバンドは、ふだんからぼくのライヴ・イベントによく出てもらっていたバンドなんです。そういう毎回出てもらっているバンドのおかげで、固定客がついて、イベントの集客に結びつく。インディー・バンド中心のライヴ・イベントだと、水戸でやるとなかなかお客さんが入んないんですよ。じゃあどうしようかと思った時に、つくばロックフェスの前夜祭という形にしたらある程度お客が入るんじゃないかと思って。しかも入場無料でやれば、たくさんのお客さんの前で観てもらえるんじゃないかなって思って。



​Y「ぼくは去年の前夜祭に行きましたけど、パンパンでしたもんね。」



I「そうですね、今はけっこうお客さん入ってもらってはいるんですけど。最初2、3年のうちはパンパンにはならなかったですかね。」



​Y「いまお話しいただいたことって、伊香賀さんが積み上げてきた10年間がもたらした結果なんだと思います。最初は客がいなかったけど多くなってきた、理解者が増えたっていうのは伊香賀さんがコツコツ地道に10年間、つくばや水戸を中心にイベントをやって来たからですよね。それはある意味で、イベントを通してエデュケーションすることによって、お客さんを育ててきたということですよね。人が増えたというのは、単にイベントの知名度が上がったからというわけではないと思うんです。」



​I「そうかもしれないですね。」



Y「そういうエデュケーションって、ご自身の活動の中でどれくらい自覚してやってきましたか?自分の活動のコンセプトをわかってもらおうっていうのはあったわけじゃないですか。」



​I「それこそ前夜祭はそうなりますね。前夜祭って有名なバンドをあまり呼んでなくて。ブレイクする前のバンドばかりだったりします。つまり前夜祭っていうのはバンドのことを知らなくても見に行こうと思ってもらうイベントなんです。だからぼくのやっていることをわかってくれる人が増えてきたかもしれないと自覚したのは、前夜祭がソールドした時ですかね。無料だからっていうのはあると思うんですけど、知らないのに来てくれる、足を運んでくれるっていう。」



​Y「無料でやることで敷居を下げて、自分の知らない音楽を知るという喜びを育てようという。



​I「GFBについても、このバンドはもうすぐブレイクするんじゃないかというバンドも呼んでいこうと常に思っていますね。それこそねごととか来るだろうなと思いましたし、SuiseiNoboAzとかは大ヒットするとは思ってないんですけど、めちゃくちゃカッコイイなと思っていて。シャムキャッツもそうなんですけど。2011年のGFBでも、Czecho No Republicはブレイク間近な時で。で、そういうもうすぐブレイクしそうなバンドがいい感じに揃って、集客も一番良かったのが2013年ですね。あと、GFBについては、お客さんにも伝わるような形である種のストーリー性を意識しています。例えばKANA-BOONには2012年12月の忘年会企画でPARKDINER(http://www.parkdiner.jp/)に出演してもらって、その次の年のGFBに出てもらうという形で演奏するステージを大きくしていったりといった感じですね。」



​Y「そのバンドの成長を、ステージを大きくしてゆくことでお客さんに見せてゆくという。」


I「そうですね。あと、Awesome City Clubは2013年の忘年会企画に出演してもらっているんですけど、彼らはこのとき、たしか結成して3回目のライヴなんですよ。元々ベーシストは違うバンドでやっていたんですけど、今度新しくAwesome City Clubというバンドを始めましたっていうことで聴いた新しい音源がすごく良かったんですよね。これは絶対ブレイクするなと思って急いでオファーしました。それで2014年のGFBに出てもらってという流れです。それ以降はメジャーになったので出てもらってないんですけど(笑)だからそういうストーリーは大事にしていますね。」



Y「オファーするタイミングに関しては、早さが命みたいなところはありそうですよね。」



I「そうですね、早さは大事ですね。というのも規模が大きくないフェスなので、早くオファーしないと出てもらえないというのがあります。出てもらったことのあるバンドでも、バンドが成長したら、次の年にはもう出てもらえないということもあるので。オファーしても、ROCK IN JAPAN FESTIVALに決まったりとか(笑)」


Y「じゃあやっぱり成長中のバンドに、他より一歩早く嗅ぎつけてオファーするっていうのが重要なんですね。」



​I「フェス業界では早い気はしますけど、ぼくの中ではすごく早いかって言われたら逆に遅いくらいな感覚ではいます。ただお客さん的には早いですよね、「これ誰?」みたいな感じで。ただ、そうすると集客に繋がらないので(笑)、そこが悩ましいところですよね。前夜祭もそうですけど、知らないバンドをどれだけ頑張って宣伝できるかっていうところがありますね。ただ今まで出演してもらったことのある、CHAIやChelmico、ドミコもいまや売れっ子ですし、TENDOUJIも、MONO NO AWAREも成長して・・・みんなどんどんGFBを卒業して行くんですよ〜・・・(笑)」



Y「若手バンドの登竜門みたいになっているじゃないですか。」



​I「売れたらもう一回来て欲しいですね(笑)」



​Y「伊香賀さんがGFBのことだけを考えるんだったら、適当なところでみんな有名にならないで欲しいみたいな。」



​I「そうなんですよ(笑)2013年のGFBだけソールドアウトだったんですけど、バンドがみんなブレイクするかしないかギリギリの時のひとたちばっかりだったことが大きいんですよね。」



​Y「たしかにそういう意味では2013年は極まっている感じしますね。赤い公園やゲスの極み乙女。がいて。」
 

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2013年GFBの様子


I「そうですね。赤い公園もその前に出てもらったことがあったんですけど。ぼくのイベントを彼らが一回キャンセルしたことがあって、そのリベンジで出演してもらったっていう感じですね。ゲスの極み乙女。もその時にはまだ川谷さんのサイド・プロジェクトだったんですよ。ぼくがオファーした時にはまだ、indigo la Endがメインだったので。ゲスの極み乙女。にオファーしたのは彼らがCDを出したばかりの頃だったので、メンバーと直接やりとりしましたね。」



Y「ぼくがはじめてGFBに行ったのは去年なんですけど、GFBが10周年のときだったので開催が3日間だったんですよね。いつもは2日間なのを3日間にしたわけですから、例年よりかなりキツかったんじゃないんですか?」



I「10周年ってことで何か特別なことをやれたらなと思って3日間の開催にしたんですけど、たいへんでしたね(笑)。あと、呼びたいバンドが増えて来たっていうのもあって。」



Y「呼びたいバンドが増えてきたっていうのは、GFBのテイストに合致してくるようなバンドが日本に増えてきたっていうことでしょうか?」


I「それもありますし、地元バンドをもう少し出したいというのが大きいですね。やっぱり彼らのチャンスをもう少し増やしたいと思って。ただ、3日間の開催は、ぼくはまだ大丈夫だったんですけど、スタッフがたいへんそうでした(笑)」


Y「でも3日に延長したからといって、コンセプトやラインナップのテイストや質が変わっていないと思うんですよね。だからほんとうに呼びたいバンドがたくさんあったんだなという感じがしました。でも伊香賀さんの老いの問題もあるでしょうから(笑)、年々体力的に辛くなっていきそうですよね。辞めたくなったりはしないんですか?」



I「毎年、辞めようかなって思うときがあります(笑)テントを立てるのも辛くなってきて。前は草刈りとか、ステージも手作りでこしらえたりしたんですけどね。」



Y「まだ伊香賀さんお若いんだから、絶対に辞めないでくださいね(笑)2019年の話をしましょう。中村一義が来るのは驚きましたね。」


I「ぼくはブッキングを決めるとき、ぼくが呼びたい音楽家を呼ぶだけじゃなく、GFBを手伝ってくれる近しい人たちの要望も聞くんです。中村一義さんについては、GFBのTシャツのデザインをやってくれているイラストレーターのnatunatunaと、保坂壮彦さんっていう昔からぼくのイベントでDJをやってくれている方がいて、その二人のために呼びました。あと、THE NOVEMBERSに関しては知り合いのバンドマンたちに呼んでくれってしょっちゅう言われていて。あとは八木さんが彼らについて呟いていたりする関係もあって(笑)、タイミング的にいいかなと。」


Y「2019年のGFBのポイントを教えてください。」


I「メンツ的は、じつは今まで連続で出てもらってた人達にオファーしてないんですよ。オワリカラ、SuiseiNoboAz、チーナ、tricot辺りに頼ってなくて。そこは2019年の新しいところかなと。」


Y「それは意識的にやったんでしょうか。」


I「やっぱり変化をしないと。さっき挙げたような常連といえるバンドが出演するから来てくれていたお客さんもいるので、それを裏切る形にはなるんですけど。だから今年は、ぼくにとっても挑戦の年ではあります。」


Y「若手枠で、この人をGFBでちゃんとプレゼンテーションしたいなという音楽家やバンドを教えてください。」



I「カネコアヤノさんはすごく好きですね。あとは、2日目が若手中心で。DENIMSは以前、忘年会企画に出てもらいましたし、TENDOUJIもぼくのイベントで何度か出てもらっています。No Busesは去年のGFBに出演していますしね。あとは茨城の若手バンドたちにも来てもらいます。



Y「最後に、GFBの今後の展望や目標を聞かせてください。」


I「若い子が来てくれる環境にしたいなと。GFBは高校生のお客さんが少ないんですよ。だから去年から高校生以下無料にしました。若い子がこういうDIYな音楽フェスにきて、インディーズの音楽の良さを若い人たちに知ってもらわないと、日本の音楽を巡る環境にも広がりがでないですよね。テレビに映る音楽も良いですけど、それだけだとどんどん状況がつまらなくなっていきますよね。」


Y「実際、テレビに出演したり、メジャー・デビューしないと一人前の音楽家と思われないっていうのはわりとふつう認識でしょうしね。地方を拠点にバンド活動やっている、というのもなかなか一人前として扱われないでしょうし。」

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GFB会場のつくばねオートキャンプ場


I「ぼくは今、自分のイベントのランナップには必ず地元のバンドいれるようにしているんですよね。それは、ぼくがライヴ・イベントをやる目的が、地元のバンドを育てるためだからなんです。ラインナップに東京のバンドを混ぜるのは、地元のバンドに刺激を与えるためで。そういう形で音楽を発展させていかないといけないと、常々思っています。地元にいながらバンドをやっている人たちが増えると、ぼくがイベントを作りやすくなりますし。極端に言うと、茨城県にとってのくるりと10-FEETが欲しい。彼らは今、京都を活動拠点にして、自分たちでフェスもやっている。京都の若いバンドマンたちも彼らに刺激を受けているでしょうし、あれはすごいことだと思います。」



Y「くるりだったら京都音楽博覧会、10-FEETだったら京都大作戦と。茨城にくるり、10-FEETのような音楽家やバンドが現れるような環境にして、地域を活性化させたいということですね。」



I「東京にいなくても、仕事しながらでも地方でアート活動ができる土壌を作りたいんですよ。音楽に限らず、写真や映像、絵だってそうなんですけど、それである程度マネタイズするとなると、東京に行かないとできないっていう現状を変えたい。例えば今、水戸に瀬能くんっていう写真家がいるんですけど、彼もそれを思ってくれていて。アー写を撮るってなった時に東京に行かなきゃいけないっていうのを、地元に音楽家がたくさんいれば彼もそれなりにやっていけるじゃないですか。そういう風に音楽をまわすことで地域の経済をまわすということが大きな目標ですね。」

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